写実主義は現実を空想によらず、ありのままに捉えたリアリズム 絵画のクールベと『ボヴァリー婦人』のフローベール
現実を空想によらず、ありのままに捉えようとする美術及び文学上の主張のこと
写実主義とはそのまま「現実をありのままに写し取る」ということです。
現実主義、リアリズムともいいます。リアリズムと言った方が私には分かりやすい。
ロマン主義と時は同じく革命の時代でした。産業革命やフランスの1830年七月革命、1848年二月革命が勃発し、労働環境は過酷になります。産業革命が進行して新興市民階級が主導権を握る一方で、パリに流れた大量の労働者が貧民街を形成していきます。工場労働者の生活状態はますます苦しくなると言う新たな階級対立が生まれます。
現実にある貧しさや醜さ、猥褻さを、ありのままに描きました。
ロマン主義の夢や理想はそこにありません。対象を抽象化することはありません。
代表的な画家はギュスターヴ・クールベ(1819-1877)
クールベは、1855年のパリ万国博覧会に向けて
左下『画家のアトリエ』(私の7年に渡る芸術活動の写実的寓意)と右下『オルナンの埋葬』(オルナンにおけるある埋葬の歴史画)を出品しようとします。
『画家のアトリエ』はその中心に自画像、右には友人や知人、左には様々な階層の人たちで囲んでいます。
しかし、展示を拒否されたため、博覧会場の隣に「ギュスターヴ・クールベ作品展。入場料1フラン」という看板を立て、公開しました。これは世界初の「個展」だと言われています。
クールベはこの個展のパンフレットに「私の生きる時代の風俗や思想や事件を見たままに表現する」と記しています。後に「レアリスム宣言」と呼ばれることになります。
はじめて、真っ向から従来のサロンのあり方、絵画のあり方に異議をとなえ、後の印象派誕生への道を作りました。
リアリズムで有名な文学者は『ボヴァリー婦人』の作者フローベール(1821-1880)
『ボヴァリー婦人』は何度も映画化されているフランス文学の金字塔です。
実際にあったスキャンダルな事件を題材にした、フローベールの事実上のデビュー作です。
小さな村の堅実な医師の元へ嫁いだ若い女主人公エマ・ボヴァリーは、田舎の平凡な結婚生活に退屈を持て余し、自由で華やかな世界に憧れ、刺激を求め、不倫愛に溺れ、借金を重ねていきます。最後は、人生そのものに絶望し服毒自殺に至っていくといったストーリーです。
「公衆の道徳および宗教に対する侮辱」罪として告訴され、この裁判沙汰が結果的に大きな宣伝となって、発売と同時にベストセラーとなりました。