2022年6月 箱根の名湯 松坂屋本店へ

芦之湯の松坂屋本店温泉の泉質が良いことで知られています

歌川広重の『 箱根七湯図会 』(嘉永5年・1852年)には箱根温泉郷の七つの温泉が描かれています。

七つの湯はわずか15キロメートルほどの距離です。東京方面から「湯もと・湯本」→「塔の沢・塔之沢」→「堂かしま・堂ヶ島」→「宮の下・宮ノ下」→「底倉」→「木賀」、最後が少し離れたこの「芦のゆ・芦之湯」となります。

湯本から木賀までは10キロメートルもないので、頑張れば1日で温泉巡りができるのかも知れません。

松坂屋本店は創業360年、皇室ゆかりの宿

「二〇二二年松坂屋本店は創業三六〇周年を迎えることができました。」二〇二二年(令和四年)一月 吉日

松坂屋本店公式ホームページ 表紙

1662年(寛文2年)「伊勢屋」として創業し、4代目が松坂出身であったことから「松坂屋」と屋号を変更しています。

歌川広重の浮世絵にも描かれ、江戸時代から木戸孝允と西郷隆盛の会見や勝海舟、山岡鉄舟、副島種臣、獅子文六が逗留するなど、多くの政治家や文人に愛されたようです。鉄舟は「江戸無血開城」陰の主役と言われ、西郷と勝海舟との江戸城明け渡しの会談にも同席しています。歴史を動かす舞台にもなっていたのかも知れません。

こうした英傑だけではなく、大正天皇皇后両陛下、皇太子殿下など皇室ゆかりの宿でもありました。

2016年、松坂屋本店は箱根山噴火による経営悪化により解散

2016年6月30日、「松坂屋本店株式会社」は株主総会の決議により解散しています。

それまでも経営難が続いていたようですが、解散の直接の原因となったのは、2015年4月下旬頃から頻発した大涌谷の火山性地震でした。5月には観測史上初となる噴火が観測され、箱根町の観光業全体に大打撃を与えています。

町が発表した「火山活動による観光業への影響調査結果」によると、噴火警戒レベルが2に引き上げられた5月の宿泊者数は前年同月比で約2割減、6月には約4割減まで落ち込んみ、6月末にレベル3に引き上げられています。その矢先の解散劇ということでした。

総会決議の説明では、値上げや人件費など固定費圧縮など経営改善を図っていたようですが、浄化槽の故障と自家源泉を汲み上げる配管破断の修繕のため、2015年9月に温泉の供給設備工事を行うとして休館していたしています。

2017年春にリニューアル・オープン

箱根金乃竹グループの経営の元、大リニューアルを経て2017年春に再オープンしました。

四千坪の敷地に、趣の異なる6つの館に全22室。湯処は2つ。

  • 鶴鳴(かくめい)館:4室。明治期に建築。2017年春リニューアル。
  • 離れは元皇室別荘:2室。それぞれ1887年(明治20年)、1923年(大正12年)建築。2021年リニューアル。
  • 春風(しゅんぷう)荘は旧岩崎家別邸を移築:4室。1925年(大正14年)建築。2部屋は2021年リニューアル。
  • 春風(しゅんぷう)荘一間:2室。1925年(大正14年)建築。
  • 芝蘭(しらん)荘:6室。1936年(昭和11年)建築。2008年、2010年にリニューアル。
  • 芦刈(あしかり)荘:4室。1962年(昭和37年)建築。2008年、2010年にリニューアル。

離れの一室『仰光荘』は大正12年8月閑院宮載仁親王御一家が当館の皇室別荘・松鶴山荘に御避暑遊ばされた折り、殿下の居間として増築したもので、昭和6年に現在の位置に移築しました

Facebook 松坂屋本店より

松坂屋本店に決めた理由は泉質と、オールインクルーシブ

最近よく耳にする”all inclusive”。「すべてが含まれる」という意味です。ホテルや旅館でさかんに取り入れられています。食事代やドリンク代、施設やアクティビティの料金など全てが宿泊料金に含まれるスタイルです。

旅行先ではお酒代が高くつきますが、ここでは、贅沢さえ言わなければ追加料金が一切かからないという、私達のためにやっていただいているようなスタイルです。これも決定打となりました。

実際、期待通りでした。ラウンジスペースにはビール、赤白ワイン、スパークリングワイン、焼酎、果実酒、日本酒、ほぼほぼそろってました。夕食の前、お風呂に入った後、寝る前と何度も足を運んで一杯。ラウンジスペースの奥には喫煙場所もあり、いやー最高でした。

旧岩崎家別邸を移築した「春風荘」、名前は山岡鉄舟が開いた「春風館道場」に由来

「春風荘」1階にある「若松」という露天風呂付きの部屋にしました。私はいつも9時頃には寝ます。妻はそれから自由にテレビを観て寝る、こんな感じなので、本間と寝室がある部屋に決めました。

何より最高だったのは、2021年のリニューアルで作られた部屋の露天風呂です。たくさんの湯の花で硫黄の匂いがたまらなく良かったです。源泉掛け流しなので50度以上の湯が流れていて、水で調整して入ります。冷たすぎたり、熱すぎたり試行錯誤しながら、少しずつ要領をつかめました。7,8回入ったと思います。

そういえば「におい」という言葉。ふつう、好ましいものは「匂い」、好ましくないものは「臭い」と書く、こんなことを”smell”を調べていく中で最近知りました。いまさら~。

館内のすべての場所で、歴史を肌で感じることができました。

ひとつ注意する点は、お風呂に行くにも、食事どころに行くにも結構階段の上り下りがあります。はっきり、脚が悪い方には向いていません。しかしすべて昔のまま維持しているので仕方ないですね。

脚を鍛え続けて、何年か先に是非もう一度泊まりたい旅館です。

1日目は箱根神社恩賜箱根公園、2日目は箱根関所旅物語館箱根駅伝ミュージアムを観光して帰りました。芦ノ湖近辺は何度も来ていますが、まともに観光したのははじめてだったので、とても楽しい2日間でした。

あとがき

箱根町はこれまで何度も災害に遭い苦難の連続です。現在もコロナ禍の中、今も必死に対策をしているのだと思います。

平常時の集客数2000~2200万人に向けて頑張って欲しい。

  • 2011年に東日本大震災の影響
  • 2015年はこの火山性地震で「大涌谷」が1年以上立ち入り禁止になり、約1737万人と数十年ぶりの打ち込み
  • 2019年は5月に箱根山の噴火警戒レベルが引き上げられ、同年11月まで大涌谷は立ち入り禁止。さらに同年10月、台風19号により土砂崩れや箱根登山鉄道の橋脚が崩壊するなどの被害が発生し、約1896万人へ
  • さらに2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、1257万人に激減、1972年以来過去最少

箱根ROMAN
~あの頃にタイムスリップ~
温泉で紡がれる歴史――。

江戸、明治、大正、昭和、平成、令和……。
雄大な自然の中で、
湯が香り、異なる時代と空間のものものが館に色艶を添える。
創業者松坂萬右衛門に思いを馳せる。
歌川広重の浮世絵にも描かれるほど、江戸の世から温泉宿として愛され続ける老舗旅館。
木戸孝允と西郷隆盛の会見や獅子文六が逗留するなど、明治の英傑が参集。
その後も皇室の方々をはじめ、多くの人々が訪れ続けている。

人々を虜にするのは、
「硫黄泉」、「硫酸塩泉」、「炭酸水素塩泉」の三大美肌泉質をすべて含む、
ここだけで味わえる効能豊かで稀有な泉質。
毎分200リットルの湧出を誇る豊富な湯量も、大きな理由だろう。
源泉そのままを、加水、加温、循環など一切せず、
まさに「100%源泉かけ流し」主義を貫いている。

しかも、 箱根芦之湯の歴史は奈良時代、およそ1,200年以上前にさかのぼるという。

さぁ、 未来に続く歴史に遊び、
愛され続ける箱根随一の名湯を
ご堪能あれ。

松坂屋本店公式ホームページ 

Follow me!